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『千と千尋の神隠し』をキーワードから考察!主要な登場人物紹介も

ジブリの名作アニメ「千と千尋の神隠し」について、5つのキーワードから考察していきます。本作は家族で楽しめる作品ながら謎も多く、意味がよくわからない人も多いことでしょう。この記事を読むことで、本作の疑問点を解消することができるはずです。
『千と千尋の神隠し』をキーワードから考察!主要な登場人物紹介も

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『千と千尋の神隠し』は2001年に公開され、興行収入は316億8,000万円・日本歴代興行収入第1位を達成した、スタジオジブリの代表作です。

また、第52回ベルリン国際映画祭の金熊賞、第75回アカデミー賞長編アニメーション部門賞などの数々の賞を受賞。世界中の人々を魅了している作品です。

スタジオジブリのアニメの多くがそうであるように、本作もまた意味深な描写が含まれています。

そこでこの記事では、『千と千尋の神隠し』について、以下のように考察していきます。

  • 『千と千尋の神隠し』のあらすじ
  • 『千と千尋の神隠し』の主要な登場人物と声優
  • 『千と千尋の神隠し』をキーワードごとに考察

『千と千尋の神隠し』をもっとよく理解して、より楽しむための参考にしてください。

『千と千尋の神隠し』の作品概要

『千と千尋の神隠し』の作品概要

『千と千尋の神隠し』は、2001年に公開されたスタジオジブリのアニメ映画です。日本国内では『タイタニック』を抜く興行収入を上げており、世界的にも評価の高い作品です。

本作では、不思議な世界に迷い込んだ少女が成長していく様子が描かれています。普遍的な成長物語でありながらも、考える余地のあるジブリ的要素を多く含み、大人から子供まで楽しめる作品と言えるでしょう。

2022年には、『レ・ミゼラブル』を手掛けた舞台脚本家により舞台化もされています。

『千と千尋の神隠し』のあらすじ

10歳の少女・荻野千尋は両親と共に引っ越し先へと向かっていました。千尋は引っ越しに不満なようで、友達からもらった花束を握りしめながらふてくされています。

車を運転する千尋の父は、整備がされていない小道に入り込んでしまいます。その道の先にはトンネルがありました。千尋は怖がりますが、両親はトンネルを抜けて先へと進んでしまいます。

トンネルの先にあったのは、不思議な雰囲気の街並みでした。人気はないものの、飲食店の店先にはおいしそうな料理が並んでいました。千尋の両親はその料理を、無断で食べてしまいます。

1人で街を見て回る千尋の前に、1人の少年が現れます。その少年は千尋に、すぐに帰るように言いました。慌てた千尋が両親の元に戻ると、そこには両親と同じ服を着た豚が座っていました。

街はもう、先ほどとは様子が全く違っていました。黒い影のようなものが店の中におり、来た道は大河に代わっていました。そして、大河を渡ってきたであろう船からは、異形の怪物たちが降りてきています。

気がつくと、千尋の体が透けてきています。そんな彼女を救ったのは、先ほど出会った少年でした。少年はハクと名乗り、千尋のことを前から知っていた素振りをみせます。

ハクは千尋に、「仕事を持たないものは動物になる」という決まりを教えました。そして、彼が勤める「油屋」で働くよう千尋に伝えます。

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主要な登場人物と声優

ここでは物語上で重要な人物たちと、声優さんに関しても解説していきます。

荻野千尋(千):柊瑠美

物語の主人公で、10歳の少女。一人っ子都会育ち。両親にすぐにわがままを言うことも多い。ブタにされてしまった両親を元の姿に戻すための契約で、湯婆婆に名前を奪われ、「千」として油屋で働くことになります。

声優は「コクリコ坂から」で広小路幸子役、「崖の上のポニョ」で婦人の声を担当した柊瑠美さん。

ハク:入野自由

不思議な世界に迷い込み、困惑する千尋を助けた色白のおかっぱ頭の美少年。湯婆婆の弟子として油屋で働いています。

ハイキュー!!で菅原孝支、おそ松さんで松野トド松役を務めた、入野自由さんが声優。

湯婆婆:夏木マリ

油屋を経営する恐ろしい魔女。頭がとても大きく二頭身という、人間離れした体格をしています。千尋に根負けし、名前を奪った上で油屋で雇うことに。息子を溺愛しています。

声優を務めるのは女優の夏木マリさん。夏木さんは朝ドラ「おかえりモネ」や「モアナと伝説の海」でも活躍されています。

リン:玉井夕海

油屋で働く、面倒見のよい千尋の先輩。口調は荒っぽいところもあるけれど、性格はサッパリとして姉御肌な少女。

声優は玉井夕海さんで、舞台や映画で活躍されている女優さんです。

銭婆:夏木マリ

湯婆婆の双子の姉。湯婆婆と見た目がそっくりで、同じく強い魔力を持っています。妹の湯婆婆よりも優しい性格をしています。

声優は湯婆婆と2役をつとめる夏木マリさん。

釜爺:菅原文太

油屋のボイラー室で働いていて、蜘蛛のような姿をしていて伸縮できる6本の腕を操って仕事をしている人。ぶっきらぼうで仕事には厳しいが、千尋を助けてくれます。

俳優の菅原文太さんが声優を担当しています。「ゲド戦記」でハイタカ、「おおかみこどもの雨と雪」で韮崎のおじいちゃん役としても演じていました。

カオナシ:中村彰男

黒子がお面を付けたような、不気味な姿をした存在。「ア」または「エ」といった声は出るが、言葉は話せません。

相手の欲しいものを手から出すことができ、それを手にすると引き換えに相手を飲み込んでしまいます。自分を油屋に招き入れてくれた千尋に執着しています。

声優は中村彰男さんで、カオナシ役で当時有名になりました。

千尋の両親(荻野明夫・荻野優子):内藤剛志・沢口靖子

引っ越しの日に不思議の町に迷い込み、町の飲食店で食事に手を付けて2人共ブタに変身させられてしまいました。

千尋の父役を俳優の内藤剛志さん、母役を沢口靖子さんが演じています。食事のシーンは、宮崎駿監督が用意したケンタッキーフライドチキンを実際に食べながら、アフレコが行われたそうです。

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『千と千尋の神隠し』をキーワードごとに考察

『千と千尋の神隠し』をキーワードごとに考察

ここからは、『千と千尋の神隠し』を考察していきます。キーワードごとに分けて記載していきますので、観賞時の参考にしてください。

トンネルと石像

「トンネルのむこうは、不思議の町でした。」という、川端康成の『雪国』の冒頭に似た本作のキャッチコピーをご存じでしょうか。このキャッチコピーが示す通り、本作にとってトンネルは大切な要素の1つです。

千尋とその両親はトンネルを抜けて、不思議な世界に迷い込み、再度トンネルをくぐり抜けることで現実の世界に戻りました。トンネルはいわば、「あちら」と「こちら」の境界線です。

また、千尋はトンネルにたどり着く前、不思議な石像を目にしています。この石像はトンネル前にあったものと同じで、道祖神的存在なのでしょう。

道祖神は別名を「サイノカミ」といい、辻(十字路)や村の境目などに奉られてきたものです。昔から辻は異界との境界線と考えられており、道祖神はその境界を守る神様とされてきました。

千尋が石像を最初に見た段階で、彼女と両親は異世界に迷い込むことが決定づけられたのかもしれません。

「食べる」という行為

スタジオジブリの作品と言えば、おいしそうな料理の数々で有名ですよね。本作にも、「食べる」シーンがいくつかあります。その中から、重要なもの2つを見ていきましょう。

ひとつ目は、千尋の両親がお店のものを食べるシーンです。

このシーンはおいしそうな食事よりも、それを貪る両親の不気味さがクローズアップされています。「天空の城ラピュタ」でのドーラ一家も凄まじい食べ方をしていますが、見比べてみると、描き方が全く異なることがわかるでしょう。

ふたつ目は、千尋がハクに渡された丸薬を飲むシーンです。食事シーンとはいえないかもしれませんが、「ものを体内に取り込む」行為であることは間違いありません。

千尋は丸薬を飲み込むことで、存在が消えずに済みました。このシーンは、日本神話にある「ヨモツヘグイ」に関係しています。

ヨモツヘグイとは、黄泉の国(死者の国)の食べ物を口にすることを指します。ヨモツヘグイを行った場合、その人は黄泉の国の住人となり、現世へ帰ってくることができなくなるのです。

千尋は、異世界の丸薬を飲むことで、その世界の住人となりました。また、彼女の両親はすでに食べ物を口にしているため、異世界のルールに縛られています。働いておらず、なおかつ、神々の食べ物を貪ったため動物にされてしまったのです。

奪われた名前

千尋は油屋で働く際、湯婆婆との契約で名前を奪われてしまいました。ハクも同様に、自身の名前を失っています。この意味は「言霊信仰(ことだましんこう)」の観点から考えることができます。

言霊信仰とは、言葉・言語そのものに霊力が宿るという考え方です。受験前に「すべる/落ちる」などと言わないようにすることがあると思いますが、これも言霊の一例です。

現在でこそ廃れてはいますが、日本だけでなく世界各地で「本名を隠す」という風習がありました。名前にも言霊が乗るため、誰かに本名を知られると支配されてしまうと考えられたのです。

千尋は名前を失うことで、湯婆婆の支配下に置かれることになりました。ハクの場合は千尋よりもさらに深刻で、長期間名前を失っていたためか、自分自身の正体まで忘れてしまっています。

千尋が「千」になってからも自分の意思で動いていたように、名前を失ったからといって自我がなくなる訳ではありません。しかし、千尋にとって湯婆婆が逆らえない存在であることを端的に表現しているのです。

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カオナシの存在

『千と千尋の神隠し』で異彩を放つキャラクターが、不気味な風采をしたカオナシです。カオナシとは、いったいどのような存在なのでしょうか。

カオナシのキャラクターは特殊です。真っ黒の体に白い仮面を付け、他人の声を借りなければ話すことができません。何に属する存在なのかは描かれていませんが、自分から油屋に入れないため神々とは少し違う存在なのでしょう。

寄る辺がないためか、カオナシは自分を招き入れてくれた千尋に執着し、彼女の欲を刺激することで自分のものにしようと考えます。

宮崎駿監督は、カオナシについて「誰の心にも存在する」と語っています。この言葉から、カオナシの正体は「誰でもない存在」と考えられるのではないでしょうか。

その人が誰であるかを表す記号としては、名前と顔が挙げられます。その顔がないということは、カオナシは個を持ち合わせていないのです。

声を手に入れたあとのカオナシは、お金をばらまき、食べたいだけ食べ、人を思いのままに動かそうとするなど、欲望に忠実です。そして、どんなに素晴らしい人間であっても、欲望がない人はいないでしょう。

カオナシは、人間の深層心理に潜む欲望が具現化したものなのかもしれません。

行きっぱなしの電車

物語後半、千尋が銭婆婆に印鑑を返しに行くシーンがあります。そのとき千尋は、カオナシや坊と共に電車に乗りました。この電車は単線かつ「行きっぱなし」で、乗って帰ってくることはできません。

定説として、この電車は死者が乗るものだと言われています。その理由は、「間違った駅で降りてはいけない」という禁忌表現や、乗客がみな影のような存在であるなどが挙げられるでしょう。

ちなみに、この電車は「海原電鉄」が運営しているとされています。その名前からすると、この電車は海の上を走っていることになります。

古来より、日本は海の向こうに浄土があると考えていました。また、海の底には異界(竜宮城)があるとされています。

銭婆婆の家があるのは、海原電鉄の「沼の底駅」です。海ではなく沼ではありますが、深く潜れば潜るほど地上に戻るのは難しくなります。

「行きっぱなし」の電車とは、千尋がこれから向かっていく場所が、戻ってくることが困難なほど深い異界であることを示しているのではないでしょうか。

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まとめ

作中に登場するキーワードを元にして、『千と千尋の神隠し』の考察をおこなってきました。あらすじや登場人物も紹介したため、本作を思い出すきっかけになったのではないでしょうか。

本作はスタジオジブリ作品の中でも、見ていておもしろく、考えて楽しい作品です。この記事を読んだなら、ぜひ、もう一度鑑賞してみてください。以前に気づかなかったことが見えてくるかもしれません。

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オオノギガリ /
ビギナーズ編集部 ライター

ゲームや読書、映画鑑賞が大好きなWebライターのオオノギガリです。色々な情報を分かりやすく、読みやすくお伝えできるよう頑張ります。よろしくお願いいたします。

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