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明治大学生が挑む!謎解き×ハッキングADV『回ル!ハッカー探偵』TIGS出展の舞台裏と熱意

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インディーゲームは自由な発想で革新的なゲーム体験を提供し、業界の多様性を高める重要な役割を担っています。低い参入障壁が新たな才能を育み、開発者とプレイヤーの距離が近いのも特徴です。
そうしたインディーゲームの発掘のために、ビギナーズ編集部は2025年3月8・9日に開催された東京インディゲームサミット(以下、TIGS)に参加してきました。 ゲーミングPCが会場に所狭しと並ぶ中、ひときわ注目を集めたのが明治大学の学生チームが開発した『回ル!ハッカー探偵』です。
明治大学公認の「総合コンテンツ制作サークル」と謎解き制作団体「SHERLOCK」の異色コラボレーションによって生まれた本作は、謎解きとハッキングという斬新な組み合わせで多くの来場者の心を掴んでいます。
今回は、開発の中心メンバーである3名の方に、TIGS出展の経緯やゲーム開発の裏側、そして今後の展望について詳しく話を聞いてみました。

明治大学 総合数理学部
杉田さん(2年)
リーダー兼メインプログラマー。今作の他多数のゲーム開発に携わり、多くのメンバーから信頼を集める。

明治大学 総合数理学部
小山さん(3年)
イラスト担当、前サークル幹事長。今作で初めてドット絵に取り組み、ゲームの世界観に多大な貢献を果たす。

明治大学 国際日本学部
藤村さん(1年)
サブプログラマー、スクリプト担当。豊富な語彙でゲームに奥深さを与える。5月のイベント出展のため一人でゲーム制作中。
目次
きっかけはサークル間の交流!?異色のコラボで生まれた斬新なゲーム

──今回のTOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2025(以下TIGS)は大盛況だったようです!『回ル!ハッカー探偵』も反響があったようですが、出展の経緯を教えてください。
杉田さん:今回開発した『回ル!ハッカー探偵』は、3〜5月頃のリリースを目指して準備を進めていました。そのなかで、3月初旬に開催されるTIGSは、リリース前に最終調整を行うにはぴったりのタイミングだと判断し、出展を決めたんです。
これまでにもいくつかのイベントに参加してきましたが、朝からずっと人の列が途切れないという経験は初めてでした。本当に参加してよかったと思っています。
──今回の経験が良いモデルケースになりそうですね。『回ル!ハッカー探偵』の開発に至った経緯としてはどのようなことがありましたか?
杉田さん:まず最初に、今回のゲームは同じ明治大の謎解きサークル「SHERLOCK」とのコラボがきっかけでした。
元々私の所属する明治大学総合コンテンツ制作サークルと謎解きサークル「SHERLOCK」は数年前まで頻繁に交流がされていましたが、代を重ねるごとにいつの間にか交流が途絶えてしまっていたのを、今の代で復活させて一緒に何か作りたいと先方にお伝えしたところ快諾していただきました。
──企画はどのように考えられたのですか?
杉田さん:ゲーム開発に参加するメンバー全員で集まって案を出し合いました。謎解きを生かすような、そしてPCゲーマーに受けそうなゲームを作ろうという話で企画や世界観を出していき、今の形になりました。
──まさに全員一致で作り上げた作品なのですね!
『回ル!ハッカー探偵』詳細情報
「回ル!ハッカー探偵」は、正義のハッカー探偵として、依頼主の悩みを解決していく謎解きアドベンチャーゲームです。
その悩みの解決方法とは…ずばり”PCをハッキングすること”です。PCの中身を解析し、その中に隠された問題を解き明かして、依頼主を救うことがこのゲームの目的です。
実はこのPC、依頼主の物とは限らないこともあり、依頼内容によって謎解きの難易度が変わる場合もあります。
謎解きに自信がある人もそうでない人も、至高の謎解き世界に足を踏み入れてその魅力に酔いしれてみませんか。
基本情報 | |
---|---|
リリース日 | |
制作 | 総合コンテンツ制作サークル, SHERLOCK |
ゲームジャンル | アドベンチャー |
対応ハード | PC(steam) |
価格 | 無料 |
推奨スペック | OS:Windows10/11 |
\正義のハッカー探偵になりきろう!/
イベント出展成功の背景にあった“こと”とは?

──開発におけるそれぞれの役割と大変だったことを教えてください。
杉田さん:私は今回リーダーとして、開発の取りまとめとメインのプログラミングを担当しました。
実はこの『回ル!ハッカー探偵』は11月の明治大学の学園祭でも出展していたこともあり、プログラムもほぼ完成していたので今回のTIGSへの出展自体はそこまで大変ではありませんでした。
ただ、開発当初はリーダーとして慣れない進捗確認だったり素材の提出をお願いしたりが大変でしたが、何よりもメインプログラマーも兼任していたので管理と作業の両立が一番大変でした。
──出展の経験がある作品ということもあり、当日は余裕をもって臨まれたようですね。藤村さんはいかがでしたか?
藤村さん:はい、メインプログラマーの杉田先輩のサポートをしつつ、メインは本筋のストーリーをテキストに打ち込む、つまりセリフを作る作業を行っていました。
自分は映像作品が好きなので、画面だけでなくテキストでしっかりとイメージされるように描写しなければいけないところがかなり大変なところです。
私の好きな作品で、アメリカで大ヒットした「ウォーキング・デッド」というドラマがあるのですが、映像による演出が素晴らしく、セリフではなく映像で感動させるようなドラマだったので、そういう映像で魅せるという美学が好きでした。
しかしその美学を文字で見せるのは難しく、そこに苦労しながらも努力して書いていましたね。
プレイヤーは早く謎解きをしたいと思っていると思いますが、その間でしっかりと読ませる文章、短く濃い内容で無駄な部分を省いた文章を作るのが難しく、 推敲しながら考えていたので、省略する作業に苦しめられていたことも印象深いです。

──それぞれのメンバーのこだわりが凝縮された作品ですね。では今回の出展に向けてはブラッシュアップがメインだったのですか?
杉田さん:そうですね。今回はノベルゲームのようなアドベンチャーということもあり技術的な課題はありませんでした。また、元々Steamなどで配信する予定があったので、学園祭よりもある程度のクオリティアップはしていました。
その後にTIGSというちょうど良いイベントがあったので、さらなるブラッシュアップを見込んで出展してみた、という流れになります。
あとはメンバーの進捗管理のケアが中心でしたね。
──ご自身のプログラミング作業もしつつメンバーのケアは大変だったかと思いますが、藤村さん、それについてはいかがでしたか?
藤村さん:結構色々相談に乗ってもらいました。杉田先輩が相談に乗ってくれたり、精神面でもサポートしてくださったので、すごく感謝しています。
時間や締め切りに追われるのは相当なストレスで、完成しない状況でお客さんに遊んでもらうのが一番不安でしたが、そこは杉田先輩が本当に頑張ってくださったと思います。
とても心強い存在でした。
──なるほど、とにかく納期との戦いということで、一般社会と変わらない厳しさがあったのですね。
ユーザーの反応を間近で見ることができる貴重な体験!

──TIGS当日のユーザーの反応はいかがでしたか?
杉田さん:2日間ありましたが、初日のビジネスデーでは、「ここの謎が分かりづらい」といった反応がありました。
ビジネスデーであることから実際にゲームを開発をしている方も多く、改善点などのフィードバックも多くいただけました。そのフィードバックを受けて、初日の当日に全て修正し、2日目に臨んだところ、概ね好評でした。
フィードバックの場として非常に有益だったと感じています。
──フィードバックを受けて1日で修正というのはすごいですね。どのくらい時間がかかりましたか?
杉田さん:プログラム的に新規実装が必要な部分は少なく、マイナーチェンジ程度の修正がいくつかあるという感じだったので、5時間くらいで終わりました。 それでもイベントが終わってからの5時間なので、食事をする時間の確保も難しかったですね(笑)
──藤村さんは2日目からの参加ということもありユーザーとしての目線に近いものがあったかと思いますが、いかがでしたか?
藤村さん:謎解きゲームなので、謎解き好きな方が多く来てくれて熱心にプレイされているのを間近で見ることができました。
謎解きゲームをよくプレイするという人でもかなり苦戦している様子も見られましたし、 2日目の一般参加日のみ参加しましたが、杉田先輩の調整もあり、難易度がかなり良い感じに調整されていたのではないかと思います。難しい謎を解いた後に「なるほど!」となっている人もいました。
──小山さんはイラストを担当されていたとのことですが、今回のゲームにも反映されているのでしょうか?また、難しかった点や調整が必要だった点も教えてください。
小山さん:キャラクターは別の人が描いていますが、今回デスクトップの画面などを担当しました。
難しかったところとしては、ドット絵であることでしょうか。
僕は普段イラストを描いていますがアニメ絵ではありません。今回のゲームではドット絵を使う方針になったため、ドット絵に対応するのが少し難しかったです。
──ドット絵にするというのは、全体の話し合いの中で世界観に合うという判断だったのでしょうか?
杉田さん:そうですね。一度、ドット絵にするか普通の絵にするかという会議があり、ドット絵の方が良いという結論になりました。
私自身ゲームを制作する際は、自分の作りたいものよりも、売れる作品をつくりたいという気持ちがありまして。インディーゲームのPC市場では、ドット絵のアドベンチャーゲームが強いと感じていたので、その要素を取り入れました。
──映像的な表現をしたいという思いがある藤村さんは、そうした杉田さんの分析とぶつかることはなかったのでしょうか?
藤村さん:全然なかったです。元々テキストベースのノベルゲームとして制作することが決まっていたので、私はテキストに落とし込むことだけを考えていたため、特に衝突はありませんでした。
杉田さん:藤村さんのテキストは本当に素晴らしいので、全く問題はなかったですよ!
──TIGS終了後の反響はいかがでしたか?
杉田さん:Steamストアページのウィッシュリストが増えたり、Twitterで私のツイートを引用して「このゲーム面白かったです」と言ってくれる人もいたりして、嬉しい反応がありました。
藤村さん:プレイした直後に「面白かったです」と言ってくれたり、Steamでプレイすると言ってくれる方もいて、とても嬉しかったです。
小山さん:学園祭でもユーザーの反応を間近で見ることができ、「面白かった」という意見を聞けたのが大きかったです。
こうしたユーザーの声を間近で聞けるのはイベントに参加したクリエイター冥利に尽きますね。
クリエイターたちの今後の展望

──サークルの活動を通して、今回のゲームイベントに限らず、在学中に今後成し遂げたい目標があれば教えてください。
杉田さん:今まで10本ほどゲームを制作してきたので、在学中に25本くらい作れたら嬉しいですね。
ゲーム制作は長いものでは1年くらいかかるものもありますが、3ヶ月だったり、2日だったりするものもあります。 ゲームによって様々です。
簡単な目標ではないですが頑張りたいです!
藤村さん:私は去年初めてプログラミングに触れてゲームを作り始めたので、まだ個人的に制作している1作目のリリースを頑張りたいというのが今の目標です。
その後は、何本も細かいものを出すよりは、1本大きなRPGを1年以上かけて作ってみたいと考えています。
小山さん:サークルの運営という点と、創作という点の2点があります。
運営については、幹事長を務めていた経験から後任に引き継ぎを行っている段階ですが、直近の目標としてはサークルの運営をシステム化することで運営にかかる時間を減らし、みんなが創作活動に時間を多く使えるようにしたいと思っています。
創作については、ゲームのイラストなどをもう少し多くの作品で担当できたらと思っています。まだ2本しかゲームに関われていないので、もっと関わっていきたいです。
──クリエイターの皆さんは制作意欲が本当に高いことがわかりましたが、将来的にも制作に携わって行きたいのでしょうか?
杉田さん:ゲーム制作が好きなので、ゲーム制作ができる会社に就職したいと考えています。
チームの強みを活かせたり、チームの目標に合っているゲーム制作をしたりするのが得意なので、自分の好みで制作するというよりは、チームの目標に合わせたゲーム作りができればと思っています。
藤村さん:私もゲーム企業を目指していて、中学校の頃からの夢です。
大学でゲーム制作をするサークルを探して、総合コンテンツ制作サークルに入りました。ゲーム企業では、映像で魅せるRPGを作りたいと考えています。
中学の頃に『キングダムハーツ』をプレイしたのですが、その映像にも感銘を受けました。それ以来映像で感動させる作品の制作元であるスクウェア・エニックスさんが大好きになり、そこで働きたいと思っています。
小山さん:まだ明確には決まっていませんが、大学院に進むことも考えています。
個人的な性格として新しいことに常に興味があり、ゲーム業界に限らず何か新しいことをしたいと思っています。 ゲームで言うと、この世に存在しないようなシナリオを考えるのが好きで、以前数学の関数を避けて進むゲームを作ったことがあります。教育も学べてゲームもできるというような、組み合わせで何か新しいものを作るのが好きです。
ゲームに限らず、新しいことをするクリエイターのような存在になれたらと思っています。
最後に
──最後に、今回の取り組みについて一言お願いします。
杉田さん:今まで何本かゲームを作ってきましたが、こういった取材を受けるのは初めてだったので、すごく嬉しかったです。
TIGSでも「面白い」と言ってくださる方がいて、そういった皆さんに楽しんでいただけるようなゲームに仕上げたいです。
藤村さん:昨年からゲーム制作を始めたばかりで、まさかその作品が記事で紹介されるなんて、本当にドキドキする貴重な体験で、感謝しています。
イベントでゲームを出展して一番嬉しいのは、時間をかけて苦労して作ったゲームを楽しんでもらえ、笑顔になっている姿を見ることです。今後、プログラミングの理解も深まり、もっと多くのゲームを作れるようになると思うので、積極的にイベントに出展していきたいです。
小山さん:本日は貴重な時間をいただき、誠にありがとうございます。こういった機会は初めてで少し緊張しましたが、たくさん話せて良かったです。
目標として、私たちの総合コンテンツ制作サークルを世に広めたいという思いがあります。来年からは幹事長ではありませんが、運営のシステム化を進めることで、サークルの発展に貢献したいです。今回はゲームの記事でしたが、私たちのサークルはゲームだけでなく、イラスト、音楽、モデリング、映像など様々な分野で活動しています。
公式Xアカウントや制作中のホームページもありますので、ぜひご覧いただけると幸いです。
──本日はありがとうございました!サークルの活動を広めるために私たちも協力したいので、今後ともよろしくお願いいたします!
まとめ
明治大学の学生たちが情熱を注ぎ込んだインディーゲーム『回ル!ハッカー探偵』。
TIGSでユーザーの声を即反映し高評価を得た反響は大きく、Steamのウィッシュリストが増加するなど、早くも期待が高まっています。
リーダー杉田さんを中心に、イラスト小山さん、スクリプト藤村さんの個性が光る中、学園祭での経験を活かし、リリースへ向け邁進している若きクリエイターたちの熱意と才能が詰まった注目作です。
異なる強みを持つ学生たちが集結し、試行錯誤を繰り返しながら完成させた本作は、インディーゲーム業界に新たな風を吹き込む可能性を秘めているでしょう。
彼らの今後の活躍から目が離せません。
TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2025

TOKYO INDIE GAMES SUMMITは、“インディーゲームを中心とした様々なクリエイターの才能が一堂に会し、頂きを目指すきっかけとなる場”となることを志し、2023年から武蔵野市・吉祥寺でスタートした、新しいインディーゲームのイベントです。
クリエイターにとっては“自身の作品を発表してユーザーやクリエイターと交流を行う機会”として。ユーザーにとっては“新しいゲーム、クリエイターを発見・体感できる機会”として。 「ここでしか得られない交流の場」の提供を目指す日本最大級のインディーゲームイベントとなっています。
取材協力
【総合コンテンツ制作サークル】
総合コンテンツ制作サークル(総コン)は、2013年6月に設立され、明治大学中野キャンパスを拠点として活動しています。
CG班 、ゲーム班 、文芸班 、イラスト班 、音楽班 、映像班 の6つの班に分かれて活動しています。
U R L:https://sokon.jp/
X(旧Twitter):https://x.com/CCC_sokon
【SHERLOCK】
明治大学公認の謎解きサークルです。
中野キャンパスを主な拠点として活動をしています。
U R L:https://meiji-sherlock.studio.site/
X(旧Twitter):https://x.com/meiji_sherlock

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